必ずチェック!

自然人の能力

・自然人の能力には「権利能力」「意思能力」「行為能力」の3つがある

・意思能力のない法律行為は無効

制限行為能力者の種類

・制限行為能力者→「未成年者」「成年被後見人」「被保佐人」「被補助人」の4者のこと

・未成年者→18歳未満の者(改正)

 

単元の学習法

普段の生活では聴き慣れない用語が出てくるのでとっつきにくいかもしれませんが、権利関係全体を通してみても非常に重要な用語です。
用語そのものを覚えるのはもちろんですが、その意味するものを正確に押さえるようにしましょう。

制限行為能力者の部分は次回以降のポイント講義で詳しく解説する予定です。
中でも「未成年者」は改正によって定義が変更されました。
宅建士試験では改正のあった部分からの出題が多い傾向にありますので、未成年者の部分は要チェックです。

 

ポイント講義

自然人の能力

民法上、人(自然人)の能力には3つの種類があります。
「権利能力」「意思能力」「行為能力」です。

権利能力

権利能力・・・権利や義務の主体となることができる能力

権利能力は出生により取得し、死亡により失います。
したがって、乳幼児であっても権利能力はありますし、意識がなく寝たきりになっている人にも権利能力があることになります。
私たちのイメージする「人」であれば権利能力が平等にあることになります。

かつては奴隷制度のように、権利能力が否定される(モノのように扱われる)ことがありました。
現在の民法ではそういう差別をなくすようになっているのです。

一方で、胎児には権利能力が認められません。
まだ生まれていないからです。

しかし、それでは不都合な状況になることがあります。
そこで、以下の3つの場合には「胎児が生まれたものとみなす」ことにして、例外的に胎児にも権利能力が認められています。

1 相続
2 胎児自身の損害賠償請求権
3 胎児への遺贈

それぞれの細かい部分はポイント講義で解説しますので、ここでは胎児でも権利能力が認められる場合があるのだということを押さえてもらえれば十分です。

意思能力

意思能力・・・自分がする法律行為の結果を認識し判断することができる能力

乳幼児や意識のない寝たきりの人にも権利能力が認められていましたが、実際に取引(法律行為)ができるとは考えられません。
ですので、法律行為をする場合、自分のした行為をしっかりと認識し判断できる能力が必要になります。

意思能力については、認められない人たちを考えるとわかりやすいです。
乳幼児、酩酊状態にある者(相当に酔っ払っている人)、認知症患者、意識を失っている者などがいます。

意思能力がない状態でした法律行為は無効です。

酔っ払いすぎてぐでっと倒れている人に、その人の車を貰う贈与契約書にサインさせても無効です。

行為能力

行為能力・・・単独で有効な法律行為を行うことができる能力

意思能力がない状態で法律行為は無効ですので、これをしっかりと適用できれば問題ないように思います。
しかし、取引の相手からすると「無効になってしまうかもしれない」というリスクを常に抱えることになります。
また、ぱっと見で意思能力があるかないかを判断することが難しい状況も考えられますし、証明も難しいです。

そこで、行為能力という能力を定めることで、判断能力が不十分な人を保護するとともに、取引の安定をはかることにしました。
具体的には、制限行為能力者制度によって保護されることになります。

 

制限行為能力者の種類

制限行為能力者には「未成年者」「成年被後見人」「被保佐人」「被補助人」の4種類があります。

未成年者

未成年者・・・18歳未満の者

改正によって成人年齢が引き下げられたことにより、18歳未満の者が未成年者となりました。
(2022.3.31までは20歳未満。宅建士試験は4.1現在の法令から出題されるため令和4年度の試験では18歳未満の改正された条文で出題されます)

保護者は親権者未成年後見人です。
未成年者を代理することができるので、法定代理人ともいわれます。

成年被後見人

成年被後見人・・・精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者

保護者は成年後見人です。

「被」がつく方が制限行為能力者で、つかない方が保護者です。
これは被保佐人や被補助人とその保護者でも同じです。

家庭裁判所の後見開始の審判を受けていなければ、事理弁識能力を欠く常況であっても成年被後見人とはなりません。(審判が必須)
これも被保佐人・被補助人に共通です。

事理を弁識する能力(事理弁識能力)とは、契約のような行為を判断することができる能力くらいの意味でとらえてもらえれば十分です。

被保佐人

被保佐人・・・精神上の障害により、事理を弁識する能力が著しく不十分である者で、家庭裁判所の保佐開始の審判を受けた者

保護者は保佐人です。

成年被後見人よりも事理弁識能力はあるものの、著しく不十分なので手厚く保護する必要があります。

被補助人

被補助人・・・精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分である者で、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者

保護者は補助人です。

保佐人よりも事理弁識能力があるものの、不十分なので、保護する必要があります。

 

事理弁識能力の程度の違いをまとめると次のようになります。

成年被後見人<被保佐人<被補助人

成年被後見人の事理弁識能力がほぼないのに対し、被補助人では大体のことは自分でできる程度の能力を持っています。

 

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